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小ネタと裏設定

オリジナル小説&漫画 「そしてふたりでワルツを」 の小ネタと裏設定ページです。

大臣のはなし

「あひぃいいい! お赦しください。神様、神様……!」

 満月の夜になると、隣の房から懺悔が聞こえてくる。

「ねぇ。一体何に怯えているのさ」
「お赦しください。お赦しください。仕方が無かったのです」

 日中、言葉を交わす彼は、とうにこんなところから出ても良さそうなほど、まともで、善人。この施設から課される作業にも人一倍熱心で、とてもここに長いこと居なきゃいけない人には見えない。

 けれど、満月の夜だけは。
 格子の嵌まった窓から差す僅かな月光が、彼の心を底なしの泥へと誘うらしい。まったくここにお似合いな、要領を得ない返答をする。

 彼はもともと、この国の大臣であったらしい。僕は詳しく知らないが、何らかの罪を犯して投獄されたのち、ここへとやって来たのだそうだ。

 これは彼本人も知っている事実だけれど、この人の房には鍵がかかっていない。実のところ、この人はもうとっくに自由なのだ。にも関わらず、月の魔力に魅入られて、自ら囚われて未だに檻の中で過ごしている。

 彼に一体何があったのか。
 おとなりさんのよしみで教えてくれないかと、直接聞いてみたことがある。そのときの答えは、昼にしてはずいぶんと曖昧なもの。

「月の裏側を見てしまったのです」

 満月の夜ごと神に赦しを乞うているわりに、月の裏側なんてずいぶんとロマンじゃないか。(注釈:ロマン主義/教条主義の対概念)

 

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